BS経営学(1)PL経営とは何か?9割の中小企業が抱える“利益は出ているのにお金が残らない”問題

「利益は出ているのに、なぜかお金が残らない」。そんな違和感を抱えたまま、日々の経営に追われていませんか?その正体は、損益計算書(PL)の数字だけで経営判断を行う「PL経営」にあります。本記事では、多くの中小企業が無意識に採用しているPL経営の構造的な課題と、そのリスクについて詳しく解説します。
PL経営とは?―単年度利益に偏った経営の構造
PL経営の定義と成り立ち
PL経営とは、売上や利益などの「単年度の数字」を重視し、損益計算書(Profit & Loss)だけを基準に経営判断を下すスタイルです。本来、企業経営には将来への投資や資金繰りの安定といった長期的視点が不可欠ですが、PL経営では「いまいくら儲かっているか」にのみ意識が集中します。
損益計算書(PL)が重視される理由
税理士から提出される主要な財務書類であり、月次報告で最も馴染みがあるPLは「黒字なら安心」「赤字なら危険」といった直感的な判断がしやすいため、PL偏重が進みやすくなっています。
日本の中小企業にPL経営が多い背景
外部CFOや財務部門を持たない中小企業では、資金繰りや財務分析が経営者の経験や勘に委ねられがちです。また、節税に意識が偏ることで、PL数値上の“利益”だけに目を向けてしまう傾向も強く見られます。
なぜ利益が出ているのにお金が残らないのか?
PL上の「黒字」と現金残高のズレ
PLは発生主義に基づいており、売上や費用が発生したタイミングで記録されます。しかし、実際の現金の出入りとは異なるため、帳簿上は黒字でも資金ショートするリスクがあります。
税金・借入返済・運転資金がキャッシュを圧迫
税金や借入金の返済、仕入れ支払い、人件費など、PLに反映されない支出がキャッシュを圧迫します。PLには反映されないこれらの「キャッシュアウト」が、「儲かっているのにお金がない」という違和感の原因です。
「お金のブロックパズル」を知らない経営
「利益=お金が残る」という誤解をしていると、資金計画は場当たり的になります。「お金のブロックパズル」とは、売上から税・返済・経費(PLに反映されない支出)を差し引いた後に何が残るかを理解することが重要です。
PL経営の3大リスク―成長できない/疲弊する/倒れる
税負担とキャッシュ不足が引き起こす資金ショート
利益が出ると税金も増える。その結果、資金が外部へ流出しやすくなります。資金繰りの設計が甘いと、黒字であっても資金ショートし、最悪の場合は黒字倒産に至ります。
社長の時間・労力に依存する限界構造
PL経営では「社長が現場プレイヤー」として走り続ける状態になりやすく、人的資本に過度に依存した非効率な経営体制となります。仕組みやレバレッジが効かないため、成長にも限界が生じます。
「利益があるのに資金が尽きる」ケーススタディ
売掛金の未回収、過剰在庫、突発的な納税などにより、帳簿上は黒字でも手元の資金が底を突き、急な支払いに対応できないケースが多数あります。これはPL経営の脆弱性を象徴しています。
PL経営からの脱却が中小企業に必要な理由
成長戦略に必要な「資産」と「キャッシュ」
単年度の利益を積み上げるだけでなく、資産の形成とキャッシュの蓄積によって、次の投資につなげる循環構造を持つことが、安定した経営には不可欠です。PLに偏重していると、この構造を築けません。
金融機関評価と資金調達力への影響
金融機関が重視するのはPLではなくBSとCF(キャッシュフロー)。PL経営のままでは、融資評価が低く、成長資金の調達が難しくなります。中長期の経営視点を持つことで、信用力が増し、資金戦略の選択肢が広がります。
PLに加えてBSとCFを見た経営が求められる時代
時代は「売上至上主義」から「キャッシュと資産の設計」に移行しています。PLだけでなく、BSやCFを活用した多面的な財務経営が、経営の安定と未来を創り出す基盤となります。
まとめ|PL経営の限界を超えるために必要な第一歩
「まずは“キャッシュの流れ”を把握する」
PL経営のままでは、いくら努力しても経営の本質的な安定にはつながりません。まず必要なのは、自社のキャッシュフローを正確に把握し、どこに資金が流出し、何が残っているのかを見える化することです。
次の記事で「経営者の疲弊構造」に踏み込む
次回は、PL経営がもたらす「経営者の疲弊構造」について、時間・お金・未来の3つの視点から掘り下げていきます。
あなたの経営は「PL偏重」かもしれません
「売上はあるのにお金が残らない」 そんな悩みを抱える経営者のために、まずは【PL脳かどうかが分かる無料セルフ診断付資料】をご用意しています。 3分でわかるチェックリストから、自社経営の盲点に気づいてみませんか?
下記ページから『BS経営計画書』を選択してお申し込みください。