BS経営学(12)BS経営とは?PL経営から脱却し、会社に“キャッシュが残る”仕組みを作る考え方

「利益は出ているのに、なぜかお金が残らない」——そう感じている経営者は少なくありません。その原因は、売上や利益といった単年度の業績指標だけに依存する「PL経営」にあります。この記事では、キャッシュフロー・資産・資本構成などを軸に据えた「BS経営」の考え方と、その実践方法について解説します。
中小企業が“綱渡り経営”から脱却し、資金と戦略に余裕を持つための経営モデルとは何か?その全体像をわかりやすくお伝えします。

目次

BS経営とは何か?PL偏重の経営との違い

「PL経営」は単年度の利益しか見えない

PL(損益計算書)経営では、「売上を上げる」「経費を抑える」といった目先の数値に依存しがちです。しかし、利益が黒字でも資金が手元に残らないという矛盾は、PLだけでは読み解けません。
まずはこの事実をしっかりと理解する必要があります。

「BS経営」は資産・負債・純資産・CFを統合的に捉える経営

一方のBS経営は、「お金が残るかどうか」「将来の財務構造はどうなるか」が見えてきます。貸借対照表をベースに、資産・負債・キャッシュフロー・自己資本比率といった中長期の財務指標をもとに、経営戦略を設計します。
つまり、PL経営が「今を見る」経営であるのに対し、BS経営は“未来をつくる”経営であるという違いがあります。

「利益≠キャッシュフロー」の罠を超える視点

利益が出てもキャッシュがないのは、「利益=キャッシュ」ではないからです。
BS経営では、CF計算書の分析や資産の流動性を通じて、「資金がどこから来て、どこに流れていくのか」を常に可視化します。
これにより、現金が残る経営設計が可能になります。

PL経営ではなぜお金が残らないのか?

「売上が上がったのに資金が足りない」現象の正体

利益が増えたはずなのに、通帳にお金が残っていない。
これは多くの経営者が経験しているにもかかわらず、「なぜか」を深掘りしないままにされています。
原因の一つは、売掛金や在庫の増加、税金の支払いといった「見えにくいお金の流れ」を把握せず、損益計算書の数字だけで経営判断をしてしまうやり方にあります。見かけの利益と実際のキャッシュフローには乖離があることを、まずは事実として認識する必要があります。

節税ばかり意識するとお金が会社から出ていく

「利益が出ると税金が増えるから、使って減らしてしまおう」
この発想は、「節税でお金を残しているつもり」でも、実は会社のキャッシュを自ら流出させている状態です。特に、税引後に“いくら残すか”を設計できていない会社は、利益が出ていてもキャッシュが残らないという致命的な状態を招きます。
多くの経営者がこの“見えない失血”に気づかないまま経営を続けてしまっているのが現実です。

「借入=悪」と思い込み、レバレッジを逃す構造

借入を“リスク”とだけ捉える経営者は少なくありません。
しかし、借入とは資産形成や成長投資に活用する「武器」です。
レバレッジの考え方を拒否することで、会社の成長スピードを遅らせてしまっている事実に気づくことが重要です。

BS経営でキャッシュが残る仕組みを作る

資産と負債のバランスを「戦略的に」設計する

たとえば、車や設備を“使う”視点ではなく、“収益を生む資産”として見る。
そうした考え方に立つと、資産の種類・借入金の組み合わせ・返済期間まで含めて、会社のお金の流れ全体を設計することができるようになります。
BS経営では、この「戦略的なバランス設計」がキャッシュ残高に直結します。

キャッシュフロー経営の実践例

たとえば、可動産に投資して事業収益を得つつ、減価償却で税を圧縮し、キャッシュを積み上げる。こうした事業構造を持つ会社は、売上や利益が少なくてもお金が増えていく体質になります。
つまり、“儲ける経営”から“残す経営”へのシフトが行えるのです。

「借入=資金調達の武器」にする思考転換

たとえば、自己資本500万円に対し、借入で1500万円の投資ができれば、事業の成長速度は3倍になります。BS経営では、このように借入を「消費」ではなく「収益を生む投資」に転換する視点を重視します。
これが、手元キャッシュを守りながら事業を加速させる仕組みです。

経営者が目指すべき「財務設計者」という新しい役割

「現場プレイヤー」から「投資判断者」へ

経営者が現場で売上を作ることに時間を使い続ける限り、会社は“仕組み”で回りません。
BS経営は、社長の頭脳が「設計図」に変わることを求めます。
判断基準を「今どう稼ぐか」から「何に資源を配分するか」へと変えることが第一歩です。

経営判断の主軸を「利益」から「資本成長」へ

単年度利益ではなく、「資本がどれだけ増えたか」「将来に何を残したか」に焦点を移す。
この考え方が、企業価値の積み上げと外部評価(銀行・投資家)向上につながります。

数字で未来を設計することで経営の自由度が上がる

お金を可視化し、設計し、戦略的に配分できる経営者は、時間・資金・人材において“選べる経営”ができるようになります。
結果として、現場に依存せずとも事業が回るようになり、経営者自身の人生にも余白が生まれるのです。

次回予告|BS経営への移行はどう進める?準備〜実行の3ステップ解説

次回は、「PL経営からBS経営へ移行するための実行手順」をテーマに、3つのステップ(可視化・体質改善・継続モデル)を解説します。
理論だけで終わらせず、実践フェーズに踏み出すためのヒントをお届けします。

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この記事を書いた人

株式会社万燈です。

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