BS経営学(14)PL経営とBS経営の決定的な違い|比較表で理解する視点の変革

「利益はあるのに現金が足りない」
「借入に頼りたくないから自己資金だけでやっている」
こうした悩みの背景には、“PL(損益計算書)だけを見て経営する”視点の限界があります。現代の中小企業には、売上や利益といった短期的な数字だけでなく、資産・負債・キャッシュフロー・資本構成といった“全体設計”の視点が必要です。
この記事では、PL経営とBS経営の考え方・判断軸・成果の違いを比較表とともにわかりやすく比較し、経営者の視点をどう進化させるべきかを解説します。
なぜ今、経営者に「視点の変革」が求められるのか?
売上も利益もあるのにキャッシュが残らない理由
PLだけを見ていると、見かけ上は「黒字」でも、実際には現金が足りないという事態が起きます。その原因は、売掛金・在庫・税金・返済など、PLに表れないキャッシュの出入りを見落としてしまうことにあります。
「節税志向」から「キャッシュ設計志向」への移行
「税金を減らせばキャッシュが残る」と思っていませんか?
実際には、節税のために経費を増やせば、その分帳簿上の利益は減っても、手元のお金まで減っているというケースが少なくありません。
多くの経営者は、“いくら納税するか”には敏感ですが、“いくらキャッシュが残るか”を計算していません。しかし会社経営において重要なのは、税金を減らすことではなく、最終的に手元にいくらお金が残るかです。
そのためには、「税引き後にどれだけキャッシュが残るか」を見据えた設計が必要です。
PL経営では未来が描けない理由
単年度の売上や利益だけを追いかける経営では、「来月どうするか」は見えても、「5年後にどうなっていたいか」を描く土台がありません。キャッシュフローや資本構成を見据えずに経営判断を繰り返すと、事業の拡大も、承継も、すべて場当たり的になっていきます。
そして気づけば、「売上はあるのに資金繰りが苦しい」「利益が出ていても社長が走り続ける」──今と何も変わらない状態が5年、10年後と続いているかもしれません。その未来を変えるには、“BS思考”への転換が不可欠です。
「PL経営」と「BS経営」の違いを比較
視点・意思決定・投資判断・役割などの比較表
観点 | PL経営 | BS経営 |
---|---|---|
経営の視点 | 売上・利益 | 資産・負債・CF・資本 |
意思決定軸 | 目の前の判断を繰り返す | 中長期視点の設計型 |
税金との向き合い方 | 節税で減らす(がキャッシュも減る) | 税引き後にキャッシュを残す設計を行う |
投資判断 | 目先の出費を避ける | 将来の資産化を前提に設計 |
経営者の役割 | 現場のプレイヤー | 財務設計者・資産形成者 |
「現場プレイヤー」と「経営設計者」の違いとは?
PL経営では、社長が現場で売上を作る「プレイヤー」であり続けなければなりません。会社の成長や安定は、社長自身が働き続けられるかどうかに左右されてしまいます。
一方、BS経営では、社長は自ら動くのではなく、会社のお金の流れや仕組みを設計して、人や資産が稼ぐ体制をつくる“舵取り役”になります。つまり「自分が動かなくても回る会社」をつくる立場に進化するのです。
「節税」か「資産形成」か──税金への向き合い方の差異
節税のために経費を使っても、将来の資産は残りません。
BS経営では、減価償却や資金調達を活用し、資産とキャッシュを同時に残す考え方をとります。
PL経営の特徴と限界
短期視点に偏る「今期の売上と利益」のみの意思決定
月次・四半期ごとの目標ばかりを気にしていると、どうしても目先の売上対策や経費削減ばかりに意識が向いてしまいます。その結果、人材の育成や仕組みづくりなど、本来やるべき“未来のための投資”に手が回らなくなっていくのです。このサイクルが、いつまでも忙しさから抜け出せない経営の限界を生みます。
借入回避、資金不足、投資の停滞
「借金は怖い」という思い込みから借入を避け、資金が足りず、必要な投資のタイミングを逃してしまう傾向があります。
その結果、優秀な人材の採用を見送ったり、成長チャンスを逃したりと、事業を次のステージへ進める機会を自ら閉ざしてしまうことにもつながります。
「社長の労働」に依存し続ける経営構造
売上が社長の稼働量に比例するため、社長が動かないと会社も止まる構造になってしまいます。
BS経営の価値と優位性
「中長期のキャッシュ戦略」に基づく経営判断
資金繰り表・BS・CFをベースに「何に、いつ、どれだけ投資するか」を設計し、未来から逆算する経営が可能になります。
「レバレッジ活用」で資産を増やす発想
自己資本だけで事業を広げるのではなく、借入という“他人資本”を戦略的に活用して、より大きな成果を狙うのがBS経営の思想です。これにより、事業のスピードもスケールも一段階上に引き上げることができ、資産を効率的に積み上げることができます。
レバレッジとは「自分の手元資金だけでは届かない成果を、設計によって可能にする仕組み」なのです。
「仕組み」が稼ぎ、「資産」がお金を生む構造へ
BS経営では、社長が動かなくてもお金が生まれる「収益資産」を育てる発想が基盤です。
可動産やシェアーズのように、資産が継続的に収益を生む仕組みを設計していきます。
どちらを目指すかで、10年後の未来が変わる
「現場で稼ぐ社長」か、「仕組みで資産を育てる経営者」か
どちらが正しいという話ではありません。
ただ、10年後も走り続けていたいか、仕組みによって成長していたいかは、今の経営判断次第です。
「数字に追われる経営」から「数字を設計する経営」へ
BS経営に移行するとは、単に貸借対照表を意識することではなく、未来を数字で描く力を身につけることです。
次回予告|中小企業に外部CFOが必要な理由とその役割とは
次回は、なぜ今「中小企業にも外部CFOという存在が求められているのか」について掘り下げていきます。財務戦略を共に描き、実行まで伴走する存在が、なぜBS経営の成否を左右するのか?その実務的な価値をお伝えします。
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