BS経営学(2)なぜPL経営は経営者を疲弊させるのか|時間・お金・未来の不安の構造

「売上も利益も出ているはずなのに、なぜお金が残らないのか?」。そう感じている経営者は少なくありません。その根本原因の多くは、「PL(損益計算書)だけを見て判断する経営」にあります。万燈が提唱する“PL脳からの脱却”をテーマに、本記事ではPL経営が引き起こす「3つの疲弊構造」を紐解き、経営における視点転換のヒントをお伝えします。
PL経営が生む「3つの疲弊」——時間・お金・未来の不安
キャッシュが残らない「お金の疲弊」
利益は出ているのに、なぜか現金が残らない──これはPL経営における典型的な課題です。PL(損益計算書)では、税金・借入返済・仕入れ・売掛金といったキャッシュアウトの動きが見えません。そのため、経営者は「儲かっているのに資金が足りない」という矛盾に日々向き合うことになります。
社長が現場を走る「時間の疲弊」
PL偏重の経営では、社長が現場のプレイヤーにならざるを得ない場面が増えます。営業、資金繰り、現場のトラブル対応まで“自分でなんとかする”経営スタイルは、社長の時間と体力に依存する不安定な体制です。結果として、戦略を描く余力が失われていきます。
戦略が持てない「未来の疲弊」
キャッシュフローに不安があると、設備投資・人材育成・新規事業といった長期的施策を実行する余裕が持てません。常に“今を回す”ことで精一杯になり、未来に備える経営が困難になります。これがPL経営がもたらす未来の見通しの欠如です。
なぜそれが起こるのか?PL経営の構造的な限界
「売上=成長」の誤解
多くの経営者が「売上が上がれば成長している」と考えがちですが、それはPL経営の危うさの象徴です。売上増加が即キャッシュ増加に結びつかないケースも多く、利益と資金繰りのギャップが拡大することさえあります。売上に頼るだけの経営は、戦略なき拡大に繋がります。
「節税」が経営判断を歪める構造
節税を目的に利益を意図的に削ることで、税負担を軽減できたとしても、それは同時に自己資本や信用力も削っていることになります。資金調達や投資のチャンスを狭めてしまい、「守ること」に偏った非戦略的な経営になりがちです。
労働集約から抜け出せない“プレイヤー型経営”
PL経営では、人手に依存した「現場主導型」の経営スタイルが強化されがちです。組織化や資産化が進まないことで、社長の稼働に頼る非効率な経営が常態化し、再現性や持続性を持てない構造となります。
PL経営のままで起こる「3つのリスク」
事業成長のボトルネックになる
採用や投資に踏み出せない、外部パートナーとの連携が進まない──。こうした現象は、PL経営の下で戦略的な資金設計が行われていないことに起因します。人材や資産への“仕込み”ができないことで、成長の限界が早く訪れます。
資金ショートのリスクが常に隣り合わせ
PLではタイミングのズレが見えません。税金や仕入れ支払い、人件費のタイミングと、入金のタイミングに差があると、黒字にも関わらず資金繰りが厳しくなります。これは“黒字倒産”の典型的な原因です。
「社長の限界」が会社の限界になる構造
社長がプレイヤーとして第一線に立ち続ける経営では、会社の成長も社長の体力・気力に左右されます。これは、再現性や引き継ぎを阻むだけでなく、出口戦略の描けない経営スタイルでもあります。
「仕組み」で支える経営へ——次に見るべきもの
「BSを見る」という新しい視点
BS(貸借対照表)を読み解くことで、会社の資産構造、財務体質、リスク許容量を把握できます。PLが「今期の成果」を示す一方で、BSは「会社の健康状態」そのもの。より深い経営判断には、このBS視点が欠かせません。
お金の流れから経営を再設計する
CF(キャッシュフロー)を取り入れた設計では、「入ってくるお金」「出ていくお金」「残るお金」の流れを見える化できます。これは、数字を単なる“結果”ではなく“経営資源”として活かす第一歩です。
PL→BSへ、“疲弊からの脱却”の第一歩
PLで利益を追うだけの経営から、BSとCFを使って「お金を残す仕組み」をつくる経営へ。これこそが、PL偏重からの脱却と中小企業に必要な成長基盤の再設計につながります。
次回予告|PL脳チェックリストで、自社の経営スタイルを診断する
PL経営の限界と、その構造的な疲弊に気づいた方へ。次回は、経営者自身の思考スタイルを可視化する「PL脳セルフチェックリスト」を紹介します。まずは現状把握から始めてみましょう。
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